「金木犀の咲く頃」 金木犀が咲く頃、僕は毎日くしゃみをし、 鼻汁をとばして彼女を不機嫌にさせた。 沈丁花が咲く頃、僕はくしゃみが止まらなくなり、 彼女は僕の身を案じてマフラーを編んでくれた。 金木犀が咲く頃、僕はまた毎日くしゃみをし、 彼女に強引に手を引かれて病院に行った。 沈丁花の花が咲く頃、華燭の典の最中にくしゃみが止まらなくなり、 彼女の薬指を突き指させた。 藤次郎正秀